名山町のリノベーション住宅

2017年2月

第27回「住まいのリフォームコンクール」企画賞受賞


歴史ある風合いが残る鹿児島市名山町。その場所でかつて商店を営みつつ、ご家族が住まわれていた店舗併用住宅。
現在ではご両親も亡くなり、商店を辞めた今もおひとりで住まわれていた。そのオーナー様から、今の住環境ではとても生活しづらく、建て替えの必要があるか相談があった。
思い出の詰まったこの場所で、思い入れのある建物を住み継ぐ方法がないか模索してみた。建物は鉄骨造3階建て。
ビルに囲まれ、唯一北面道路側が空いている大変厳しい敷地環境であった。
そのため1階と2階は日中でも暗く、狭く急な階段を昇り降りされながら最も明るい3階で生活されていた。
また本来2階建ての建物であり、3階部分を増築していることが判明した。新耐震基準前の建築であり、構造的にも不安な状況の改善は必須であった。
昔ながらの近隣の方々との繋がり、往来が激しい立地から、人との関係を念頭に置きつつ、この街に住むことの意味を考えることが必要であった。

3階増築部分は撤去し、建築当時の本来の床面積へとし、建物重量の低減と低重心を図った。
アスベスト除去によって現れた躯体には、間柱の増設と耐震面材による補強を行った。
1階の旧店舗部分は駐車場へと変更し、奥に玄関、水廻り、ゲストルームを配置。ゲストがオーナー様を気にすることなく過ごせる配置とした。
2階部分はメインの居住空間となり、北道路側には大きく窓を設けた。内部の間仕切り壁を取り払うことで、窓からの光は白い壁を反射しながら奥へと届くようになっている。同時に寝室まで風が通り抜けられるようになり、快適で広々とした明るい空間へと変化させた。階段は光庭となり、屋上からの光を階下に届ける役目を持たせた。
屋上へ上る階段はファイバーグレーチングを使い、光を1階まで導くよう設計した。またファイバーグレーチングは階下からの風を遮ることがないため、階段室は夏場の熱せられた空気を屋上へと逃がす煙突効果を狙った。
また北側の窓はオーナー様となじみの近隣の方とのコミュニケーションの場でもあり、招き入れ、または呼ばれ、外出するための誘導装置ともなっている。
屋上は最も日当たりが良いため、洗濯物や布団などを干す最も適した場所であるが、人通りの多い地区でもあるため、前面道路のどこからも屋上の手すりや物干しが見えないよう後退させて配置した。
愛着がある建物を生かしながら、名山町で快適に住み続けることを考え設計した住宅である。

所在地:鹿児島県鹿児島市名山町
用途:専用住宅
構造:鉄骨造2階平屋建て(3階建てからの減築) 
住宅床面積:103.65㎡(31.3坪)+屋根付駐車場32.78㎡
設計監理:株式会社プラスディー設計室  
施工会社:株式会社N.3建設
写真撮影:中西 雅人(studio folk)

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リノベーション前

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